1 基本方針
遠州地域は、綿・麻を中心とした織物産地を形成してきましたが、分業化による前工程業者の減少や従業者の高齢化に加え、約3年に及ぶ新型コロナウイルスの感染継続の影響を受け、繊維業界を取り巻く環境は、より一層厳しい状況となっています。このため、今後においては、自社の強みを生かした高付加価値製品の開発や、ECサイト等の活用といった新たな販売方法の確立など、アフターコロナを見据えた取組が望まれています。
そこで、協会では、これまでも会員組合・企業との連携により、産地の活性化を目指して事業に取り組んでまいりましたが、さらに、遠州織物産地を盛り上げるための活動に努めていきたいと考えています。
ついては、令和5年度において、以下の点に重点を置いた事業を展開してまいります。
(1)「遠州織物」ブランドの発信強化
織物製造、販売、更には地元のクリエイター等との連携により、県内外に向けて遠州織物の発信を強化していく。また、マスコミ等を通じて、「遠州織物」(地域団体商標)の普及を図っていく。
(2)需要拡大、販路開拓の推進
首都圏での「遠州織物コレクション」の開催や大規模展示会への出展支援、県内での「綿の産地フェア」やPRイベントの開催等のほか、ECサイト等の販売ツールを活用して、遠州織物の需要開拓、販路開拓を図っていく。
(3)ゆかた・和装文化の普及
ゆかたや和装小物、郷土工芸品「浜松注染そめ」等をPRする「注染・ゆかた・和装展」の開催などにより、ゆかたや和装製品の販路拡大に努めるとともに、「高校生ゆかた着付け教室」等を通じて、若年層へのゆかた等の和装文化の普及を図る。
(4) 若手人材育成のための環境づくり
若手人材の参入・育成のため、若手事業者等のグループ活動の支援と併せ、それらの活動拠点となる施設利用の活性化などの環境づくりを進めていく。
(1) 需要開拓事業 (19,410千円)
遠州産地における綿麻等の天然素材に対する高度な加工技術や産地の特性を活かしながら、オリジナリティーに富んだ複合産地として再構築していくことが必要であり、新たな需要開拓、販路拡大に努めていく。
① 遠州産地需要開拓事業 (16,220千円)
遠州産地で企画・生産された新製品及び二次製品をアピールするため、首都圏で開催される、アパレル企業・デザイナー・小売店等を対象とした展示商談会への出展を支援する。
展 示 会 名 |
期 日 |
会 場 |
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Premium Textile Japan 2024 |
S/S |
令和5年5月24日(水)~25日(木) |
東京国際フォーラム |
A/W |
令和5年11月1日(水)~2日(木) |
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東京インターナショナル・ ギフト・ショー |
2023秋 |
令和5年9月6日(水)~8日(金) |
東京ビックサイト |
2024春 |
令和6年2月6日(火)~8日(木) |
イ 遠州織物コレクション事業 (7,940千円)
本協会の会員組合・企業が、独自に行う高品質・高付加価値の新製品の開発を支援するとともに、産地単独展示会「遠州織物コレクション」を東京都内で開催し、開発した新企画製品等の提案を行う。
会 場:カイタック(東京都目黒区中目黒)又はTEPIA(テピア) 東京都港区北青山 (予定)
ウ 綿の産地フェア開催事業 (530千円)
遠州織物の地産地消を推進するため、地域住民へ遠州産地で生産される繊維製品を展示販売し、遠州織物の普及、需要拡大に努める。
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期 日 |
会 場 |
1 |
令和5年 6月10日(土) |
アミューズ豊田(磐田市) |
2 |
令和5年10月14日(土)~15日(日) |
浜松市ギャラリモールソラモ |
エ 新テキスタイル開発・販路拡大事業(1,250千円)
遠州産地の織物生産者とデザイナー等との協働による、新たなテキスタイル(生地)等の開発を支援する。なお、事業実施にあたっては、コーディネーターの指導のもと、3組程度のマッチングを図り、新たなテキスタイル開発を行う。
② 海外販路開拓事業 (550千円)
遠州産地の繊維製品の海外輸出戦略を促進するため、海外で行われる展示会出展や現地主要ブランド各社との個別商談等を行う会員企業等の活動を支援する。
③ マーケティング強化支援事業 (2,640千円)
遠州産地の織物生産者の自立化に向けた動きを促進し、新たな販路開拓のため参加する展示会出展等を支援する。
展 示 会 名 |
期 日 |
会 場 |
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高機能素材Week |
S/S |
令和5年10月4日(水)~6日(金) |
幕張メッセ |
T・N Japan東京展 (テキスタイル ネットワーク ジャパン) |
S/S |
令和5年4月11日(火)~12日(水) |
WITH HARAJUKU HALL |
A/W |
未定 |
(2) 展示・交流事業 (2,130千円)
ゆかたや和装の普及と遠州産地の振興を図るため、新作ゆかたや和装製品の展示販売や織り・染めに係る伝統技術を広く紹介する「注染・ゆかた・和装展」を開催する。
期 日:令和5年7月8日(土)~9日(日)
会 場:浜松市ギャラリモール「ソラモ」
また、高校生を対象とした「ゆかた着付け教室」を県西部の高校で開催し、ゆかたの着付け方法、技能、マナー等を基礎から伝授し、ゆかた及び着物(和装)の普及を図っていく。
② 会員組合交流支援事業 (330千円)
従前の生産体制に留まらず、新たな発展の契機をつかむため、会員組合等が行う、他産地繊維関係者との情報交換や交流を通じた連携・協調等に関する事業を支援する。
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① 後継者育成事業 (1,100千円)
業態(織布・染色等)の枠を超えた若手事業者等のグループが行う新製品開発や展示会等出展、さらには先進地視察研修等の取組を支援し、メンバー間の連携強化を通じて、後継者の育成に努めていく。
また、若手人材育成のための環境づくりについても進めていく。
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(4) 管理・運営事業
ア 令和5年3月1日に、長年の懸案となっていた、静岡市内に所有する旧静岡繊維工業館跡地の土地と(株)竜地所有の浜松市内4箇所(下記一覧表参照の土地の交換を実施。過去同様の使用目的である賃貸(コインパーキングとして使用)により、令和5年度は年間8,670千円の収入を見込んでいる。
なお、旧静岡繊維工業館建物の取壊し費や退去者への補償金等の支出のため、平成29年に資金の借入れを行っており、その返済には当事業収入を充てているが、これ以外に法人税や固定資産税等も当事業に伴うものであることから、結果的に当事業収入から協会運営費に充当できるのは、約3,550千円余である。
〔令和5年度の当該事業収支見込み〕 (単位:千円)
収 入 |
支 出 |
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土地賃貸収入 (723×12月) |
8,676
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借入金 返 済 |
元金(102×12月) |
1,224 |
利 息 |
126 |
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法人税 |
1,300 |
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固定資産税 |
989 |
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諸経費(土地運用事業関連経費) |
1,480 |
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土地運用事業収益 |
3,557 |
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合 計 |
8,676 |
合 計 |
8,676 |
※ 当該事業実施に伴う土地賃貸及び借入金返済状況は、以下のとおりである。
土地賃貸 |
賃 貸 先 |
株式会社アイペック(東京都町田市) |
賃貸契約期間 |
令和5年4月1日~令和8年3月31日 (契約期間終了後、双方申出がなければ同一期間自動更新) |
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賃貸収入 |
723千円/月 |
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借入金返済 |
借入目的 |
旧静岡繊維工業館建物の取壊し費、同館退去者への補償金、損失補填 |
借入金融機関 |
浜松磐田信用金庫 |
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借入金額 |
12,200千円 |
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借入条件 |
10年返済 (平成29年11月~令和9年10月) 年利1.6%、元金均等償還 |
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返済金額 |
102千円/月+利息(約10千円/月) |
② 地域団体商標「遠州織物」及びふじのくにシャツ「武襯衣」収益事業
地域団体商標「遠州織物」とふじのくにシャツ「武襯衣」のブランド展開を図るため、シンボルマークとロゴマークの付いた織ネームや下げ札を販売し、広くPRしていく。
③ 「遠州織物 Co-Lab.」運営事業
浜松市総合産業展示館内にある遠州織物をPRする「遠州織物Co-Lab」は、利用者が少しずつ増えてきているものの、まだ認知度は高くない状態にある。また、クリエイター等が使える作業スペースも整備されているので、今後更なる活用を促していく。
④ 遠州産地トラベル事業
遠州産地の事業者と当産地に興味を持つ人との接点を設け、産地の活性化や人材確保に繋げることを目的に実施する「遠州産地ツアー」及び「遠州産地の学校」を遠州産地振興協議会と連携して取り組んでいく。
ア 「遠州産地ツアー(遠州織物Travel)」の実施
学生(専門学校・大学)や顧客(デザイナー・消費者等)を対象とした、遠州産地の事業所やスポットを巡るバスツアーを企画・開催する。 (年3回程度実施-公募2回、学生1回)
また、大学や高校等が実施する遠州産地視察についても、積極的に協力していく。
イ 「遠州産地の学校」の開催
㈱糸編が中心となって行っている、遠州産地の職人や事業者が講師となって、製造現場での仕事内容や技術、仕組み等について学ぶ講座の開催を支援していく。